不眠の正体

なぜ不眠になるのか

睡眠の専門家が不眠症に・・・

そもそも不眠とはなんでしょうか。

精神的にストレスを感じたり、身体的な苦痛などによって十分に眠れない状態をいいます。
生活リズムの乱れや心配事で寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりする状態が続いていると不眠症です。

不眠症睡眠障害の一つですが、この不眠症には4つのタイプがあります。

入眠困難・・・布団に入っても30分以上眠りにつけない
中途覚醒・・・いったん眠りについても夜中に何度も目が覚める
早朝覚醒・・・起きたい時間の2時間以上前に目が覚めてしまい、その後は寝れない
熟眠障害・・・眠りが浅く、睡眠時間の割には熟睡した感じがしない

生活環境の変化で4つのタイプの不眠症になるわけですが、一つの例としてお伝えします。

経済的な影響が大きい新型コロナは、睡眠への影響もとても大きいです。
生活習慣の変化、仕事や将来への不安が強まって、身体が疲れているにも関わらず脳が覚醒してしまい、睡眠の質にも影響を及ぼしています。

そもそもストレス社会と言われる現代、身体や精神的なダメージから睡眠が悪くなりやすい条件が増えています。
それにプラスして、特にコロナの自粛期間中は不眠症になってしまう方が増えました。

適度に運動をしていれば身体が疲れて深い眠りを促す効果がありますが、リモートワークや遠隔授業(オンライン学習)により、通勤・通学に伴う“歩行”という運動負荷が減り、また「3密」を避けるためにスポーツクラブなどでの運動習慣が減少、部活動の制限なども相まって、眠りが浅くなりがちになってしまいます。
眠りが浅くなってしまうのは、身体を動かしていた方が動かなくなると今まで使っていたエネルギーが余ってしまうからと考えられます。

また、在宅勤務・在宅学習になり、通勤・通学にかける時間がなくなったことでギリギリまで寝ていられるようになりました。
そうなったことによって、起きる時間・寝る時間がコロナ以前に比べて遅くなってしまい、自然な眠りのリズムが夜型にずれ込んでしまっていることが寝付きの悪さや睡眠の質の低下につながっています。

お恥ずかしい話、睡眠の専門家である私自身が睡眠が悪くなってしまっていまいました。

基本的に寝ている時間以外は仕事三昧を謳歌しておりますが、人と会うことが極端に減り電話やZoomなどのシステムを使って打合せをするので家から出ず、ずっとパソコンに向かって仕事をしています。
何故かパソコンに向かって仕事をすることで更に仕事に没頭するようになり、今まで以上に寝なくなってしまいました。

何故、眠れなくなったのか
最初は外出する時間が減って、仕事をする時間が増えたことによって今まで溜まっていた仕事も消化できて喜んでいました。

翌日に出かける予定がないので多少遅くなってもいいや、という軽い思いから夜中に集中して仕事をするのが楽しくなって夜中に覚醒するようになってしまったのです。
窓の外を見ると明るくなっていることが増えていきました。

そこで気がつけば、精神的に不安定になって意味もなく不安になったり、イライラすることが増えています。
うつ症状が出てると思うこともあり、新聞販売店を経営していた時と同じ状態になっていました。

正直、自分自身でも「懲りないな…」と思ってしまいました。
幸い、今は睡眠の質を上げることを知っているのですぐに修正が出来るのが以前と違うところです。

生活環境が与える睡眠への影響

林原LSI株式会社が、40歳以上の女性を対象に「コロナ禍による睡眠の変化」に関する調査を実施した結果があります。
新型コロナウイルスの感染拡大による自粛期間中、睡眠に変化はあったか?の質問に

・大きな変化があった(6.0%)
・若干の変化があった(26.0%)

と、3割以上の方が「睡眠に変化があった」と回答しています。
また、「どのような変化があったか?」との質問には

・睡眠時間が減った(26.6%)
・睡眠時間が増えた(26.0%)
・夜型の生活になった(20.3%)
・不規則な生活になった(14.7%)
・朝型の生活になった(4.8%)
・規則正しい生活になった(3.7%)

と、回答していますがストレスや不安から睡眠時間が減ってしまった方が多い一方で、在宅時間が増えたことなどの影響からか、睡眠時間が増えはしても夜型の生活になってしまったという方も少なくないようです。

睡眠時間が減った人と増えた人の違いは他にもあります。

睡眠相談に来られる方にヒヤリングすると、睡眠時間が減ったのは仕事量が増えて忙しくなったという方が多いですが
「キリのいいところまでやってしまうとついつい深夜になってしまう」
「仕事時間が長くなって効率は悪くなっているかもしれない」
と無理に仕事を詰め込み過ぎて、夜型の生活になっているようです。

今の状況になる前は、会社に勤めていると働き方改革で残業が出来ない会社も増えていきました。
帰らなければいけないので1日の終わりがありましたが、自宅で仕事をしていると通勤がありませんからエンドレスになってしまい勝ちです。

逆に朝方になって、規則正しい生活になったという方にヒヤリングしてみると、1日のスケジュールを学校の時間割のようにきちんと決めて仕事をしているとのことです。
そういえば、高校生までは規則正しい生活をしていたのは皆さまも記憶にあるのではないでしょうか。
子どもの時は体調が良かったという方も多いと思います。

また、例えは悪いかもしれませんが、罪を償うために刑務所などに入られていた方の話をお聞きすると
『自由はないけど、とても健康的になる』とお聞きしたことがあります。

そう思うと、改めて規則正しい生活をすることがいかに大切かわかります。

ちなみに睡眠障害で入院をすると、とても規則正しい生活をするのがもっとも大事な治療法となります。

そして、生活環境生活習慣がいかに睡眠に影響するかおわかりいただけると思います。

概日(がいじつ)リズム睡眠障害

寝る時間をもとに戻せない

「寝る時間を以前のようにもとに戻したいのに戻せなくて困っています」
といったご相談を多くいただきます。

まず、人の身体の体内時計は24時間じゃないってご存知でしょうか。

人の体内時計の周期は約25時間で地球の周期とは約1時間ズレていることが分かっています。
このズレを修正できずに睡眠と覚醒のリズムが乱れて起きる睡眠の障害を【 概日リズム睡眠障害 】といいます。

人の身体は体温などの自律神経系、内分泌ホルモン系免疫・代謝系などが脳の中にある体内時計によって約1日(24時間)のリズムに調整されています。
この約1日の周期のことを【 概日リズム 】というのですが、25時間周期との約1時間のズレは日常生活の様々な刺激を受けることによって体内時計が外界の周期に同調し、約1時間のズレを修正してくれています。

それで、24時間周期の環境変化に対応して生活することができているのです。

ですから、何も考えないで自由に生活していると毎日1時間づつ寝る時間も自然とズレていってしまいます

隔離された環境下で時刻と関係なく自由に生活してもらうと、寝付く時刻と目が覚める時刻が1日ごとに約1時間ずつ遅れていくことが観察されています。

※厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトより

このズレを修正することができない状態が続きますと、望ましい時刻に眠ることができなくなっていきます。
また、無理に外界の時刻に合わせて覚醒しても体内時計の時刻と外界の時刻とのズレのために眠気や頭痛・倦怠感・食欲不振などの身体的な不調が現れてきます。

続いてしまえば、うつや精神的な病気になるリスクだって大いにあり得ます。

概日リズム睡眠障害は大きく分けて2つ

そして、この睡眠障害は大きく2つに分けられます。

ひとつは海外に行ったことのある方は経験があると思いますが、時差ボケと言われる【 時差症候群 】
交代勤務などで寝る時間が一定していない【 交代勤務睡眠障害 】

といった人為的・社会的な理由によって短期間に体内時計をずらさなければならない場合に起きる【 外因性概日リズム睡眠障害 】

もうひとつは、外界の周期に体内時計が同期する機能に問題が起こるもので【 内因性概日リズム睡眠障害 】といいます。

この、内因性概日リズム睡眠障害としては深夜にならないと寝付けず昼頃まで起きられないという睡眠パターンが固定してしまう【 睡眠相後退症候群 】
反対に夕方になると眠ってしまい早朝に目が覚める【 睡眠相前進症候群 】
寝付く時刻と目が覚める時刻が毎日30分~60分ずつ遅れていく【 非24時間睡眠覚醒症候群 】
睡眠と覚醒のリズムが見られなくなってしまう【 不規則型睡眠覚醒パターン 】
の4つがあります。

※厚生労働省e-ヘルスネットより

コロナ禍の影響で、このどれかに当てはまってしまう方も少なくないのではないでしょうか。

リモートワークなどで起こってしまう内因性概日リズム睡眠障害が、このコロナ不眠の正体であると言えます。

ここで注意したいのは、外因性で起きる時差症候群交代勤務睡眠障害内因性概日リズム睡眠障害になり得る可能性があるということです。
睡眠相談に来られた方の例のように、概日リズム睡眠障害になるとなかなか元の睡眠に戻るのは簡単ではなく、治るのには時間がかかってしまいます

午前3時の一線を越えないことが大事

なぜ午前3時を越えて寝てはいけないのか

人の身体は「寝やすい時間帯」「寝にくい時間帯」が決まっています。

ご説明した、概日リズムの「サーカディアンリズム」
12時間周期の「サーカセメディアンリズム」
90分周期の「ウルトラディアンリズム」
というリズムが重なり合うのが夜中の3時ごろになっていて、寝る時間が3時を越えると睡眠の質が悪くなってしまうのです。

という理由から『午前3時の一線を越えてはいけないのです。

また、このリズムによって体温などが変動し、身体の働きに影響をしていきます。
人の身体は寝ている時の体温は起きている時に比べると1度くらい低くなるのをご存知でしょうか。
超熟睡している状態とは筋肉が弛緩して血管が広がり、体温が下がっている状態です。

そもそも、生活のリズムが狂ってしまうことが思った以上に身体に負担をかけてしまうのはどなたでも想像できますよね。
私自身、若い時はその日乗り切ることはなんともありませんでしたし復活も早かったのですが、年を重ねるとともにその日のパフォーマンスは驚くほど悪くなり、完全に体調が戻るまで時間がかかるようになってしまいました。

このコロナ禍で在宅ワークが増え、時間が自由になることによって「コロナ不眠」ということばが産まれるくらいですから、時間と体内時計のコントロールが難しくなっているのだと思います。
起業家の方は特にそうなんではないでしょうか…

夜勤などでどうしても3時に眠れない方もいらっしゃると思いますが、そういう方は仕事が終わってから帰る時に朝日を浴びないようにしてください。
朝日を浴びてしまうと脳が起床モードになって頭が冴えてしまい眠れなくなってしまったり睡眠の質が落ちてしまうので要注意です。
帽子をかぶったりサングラスをかけるなどしてみてください。
目から入る光を防ぐことで緩和されます

起きるのが極端に早いのもNGです

あと、起きるのが極端に早い人NGです。
健康のために朝、太陽が出る前にジョギングをされる方がいらっしゃいますが、健康面から考えると良くても睡眠学的には体内時計を乱して不健康になる可能性があります。

これは、人の体内時計に最も影響するのは「太陽」だからです。
基本的に、人の身体は太陽が昇ると朝がきたと認識し身体は起床モードになり太陽が沈むと夜になったと認識し身体は寝るモードになるようになっています。
太陽の光を浴びることで体内時計はリセットされるということです。

それだけ私たち人間は太陽に影響され、太陽の恩恵を受けているということになります。

また、早朝に目覚まし時計で起床される方でしたらいいのですが、早朝に目が覚めてしまうのは
「早朝覚醒」という睡眠障害の可能性もあるので要注意です。

具体的にいうと自分の望む起床時刻より2時間以上早く目覚めてしまう状態です。

年をとると体内時計のリズムが前にずれやすかったり、若い人に比べて夜遅くまで起きているのがつらくなるので、早寝早起きになります。
この症状は、シニアによくみられますが、うつ病の方にもよくみられます。

いずれにしても、人の身体は朝日が昇ったら起きて、日が沈んだら活動を休むようにできているので、人が本来もっている修正に近づけることが良い睡眠のポイントになってきます。

分かったけど忙しくて睡眠時間は変えられないという方は私自身が体験した睡眠の質を高める方法ををご提案させていただきます。
睡眠の善し悪しは「時間」×「質」で決まります。

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